街から離れたド田舎だった。
コンビニすらもなく村の人達とは全員が顔見知りで
子供が少なく俺の学年は俺1人だと言うこともあり
俺のことを見つけると村の人達はいつも話しかけてくれた。
話しかけてもらっても挨拶も返さず走って逃げちゃうような子供だった。
と言うのも、当時住んでいた村のことがあまり好きじゃなかった。
学年は俺1人だし街からは離れているし
こんな田舎なんかより都会に住みたいと思ってた。
下級生や上級生との合同授業なんかも稀にあった。
全校生徒が集まっても教室1つが広く感じるくらいだった。
学校でも口を開くことなく、家に帰っても本を読むくらいしかすることはなくただ退屈な日々を送っていた。
ある女の子とその母親が村に引っ越してきた。
どうやら村に母親の実家があったのだと思う。
小学3年生ながら父親のいない2人のことを見て
なにかを感じていた思い出が頭の中に少し残っている。
俺はあまり得意ではなかったが両親に連れられ出席した。
そこで彼女を初めて見たわけだが第1印象は気の強そうな子だな、だった。
髪は短く、顔は整っていたと思う。
2人を囲んで大人達は酒を飲み、子供は2階で遊ぶ。
まぁ俺はその輪の中には入れずいつも1階の隅の方で会が終わるのを本を読みながら待っていた。
すると村長が「俺君よ、ちょいとこっちに来い」と言ってきた。
すると村長が「あの子に村を案内してあげなさい、君とは同級生だから仲良くやれるよ」と言った。
それを聞いた俺は恐らく嫌な顔をしたのだろう。
村長は「大丈夫、よろしく頼んだよ」と続けた。
母親のそばでつまらなそうにしていた。
同級生の女の子と会話するのは初めてなわけで多分緊張していた。
「ちょ、ちょちょちょっと村を探検しませんか!」
今考えるとわけのわからない誘い文句だった。
けれど彼女は凄く嬉しそうに
「うん!」と返事を返してくれた。
ただ彼女の二三歩前を歩き村を回った。
彼女は「真っ暗だね、なんにもないね!」なんて呟いてた。
大きな村ではないので俺は全く疲れてなかったんだけれど
彼女が足を止めたので無言でその場にあった石に腰を下ろした、もちろん彼女も同じように隣に座った。
俺は「どこがだよ」と少しカッコつけたような言い方をした。
「あ!やっと喋った!全然喋らないから怖かったんだから!どこかに連れてかれると思って...」
第一印象とは真逆の言葉が彼女の口から漏れたからか、俺は少し楽になった、ギャップというヤツなんだと思う。
家族以外とは初めて、人と会話をすることが出来た。
いや、今ではその理由はわかってる。
彼女は色んな質問をしてくれた。会話できたのはそのお陰もあったのだと思う。
普段どんな様子なのか、学校はどうなのか、俺はいつもなにをしているのか、なにが好きなのか、と目をキラキラ輝かせながら話を聞いてくれた。
1番答えに困った質問があった。
「この村のいい所ってなに!?」無邪気に放たれた質問には悪意はなかったのだが、当時の俺からすれば東京大学の入試問題よりも難しい質問だった。
その答えを言うまで10分は考えたかもしれない。
「この季節は向日葵が咲くよ、それから花火大会があるんだけどすごく綺麗だよ」なんとか絞り出した答えに
「あんだけ考えたのにそれだけかい!」と彼女は笑いながらツッコンでくれた。
俺も色んなことを聞いた、どこから来たのか、なにが好きなのか、本は好きか。
そんな質問に彼女は食い気味で答えてくる。
1つ気になっていた、彼女の父親のこと。これについては触れることはしなかった。小さいながらも気を遣ったのだと思う。
村のあちこちで俺達を呼ぶ声が聞こえた。
俺達2人は焦って村長の家に帰った、少しだけ両親に怒られたけれど家に帰ると「2人で何話してたの?」なんて嬉しそうに聞いてくれた。
彼女の母親も村長さんもニコニコしていた。
集会が終わると彼女は「また明日ね!」と言ってくれた。
同級生ができたからか、会話をする相手が出来たからか
その日は学校がとても楽しかった。
休み時間も授業中も彼女と話していた。
帰りに彼女が「向日葵見に行こうよ!」と言った。
俺は何故か得意げに「任せろ!」なんてらしくない言葉で返した。
彼女は「ここ昨日通ったね」と言った
「もう覚えたんだ、凄いね」と返すと
「ここ気に入っちゃった!」と彼女は微笑んだ。
前日にここを通った時は暗くてなにもないただの道だったけれど
そこは川が流れていて橋が架かっている。そしてその橋の上から辺りを見渡すと川を挟むようにして向日葵畑が広がっている。
素敵な場所だったんだなと感じる。
彼女はそれ以上の言葉を発することなくただ
橋から足を下ろし腰をかけて向日葵を眺めていた。
その時の彼女の笑顔は今でも覚えてる。
田舎だったため特にすることはなく
畑で遊んだり時には仕事を手伝ったりの日々を過ごした。
彼女はすぐに疲れてしまうので
「体力ないなぁ!」なんてよく馬鹿にした。
彼女の影響からか俺も少しづつ変わっていった。
村の人達には元気に挨拶を返すようになった。
村の子供たちとも仲良くなった。
2つ上の男の子以外とはよく遊ぶようにもなっていた。
まだまだ終わらないので見てくれてる方
あとでゆっくりまとめて見るのもいいと思います。
「花火大会一緒に見に行かない?」と言ってきた。
俺は「でも村のどこでも見れるし一緒に行くもなにもないんじゃない?」なんていう馬鹿な返事をした。
確かに村ならどこでだって見られる。
けれどそういうことじゃないことは今ならわかる。
彼女は「そっかぁ〜」と少し残念そうだった。
結局花火大会は小学校のみんなで行くことになる。
たった数人の全校生徒で今か今かと待ちわびていた。
彼女は少し遅れてきたのだけれど浴衣を来ていた。
「花火見るだけじゃん!」なんて笑ったけれどすごく似合っていた。
「じゃーーーん!」なんて無邪気にはしゃぐ彼女を小学生みんなが取り囲んでいた、浴衣なんて着る人いなかったしね。
なかったなぁ
本当に仲の良い友達だった
1年生の2人がすごくはしゃいでいた。
可愛いなぁなんて思っていると横でそれ以上にはしゃぐ彼女がいた。「すごーい!わぁーーー!」なんて騒ぐもんだから
「少し静かにしろよな!」なんて大人ぶった。
けれど当時3年生、はしゃいでいてもおかしくないんだよな。
ただただ仲のいい友達だったな。
花火大会が終わると彼女は俺に
「来年も来ようね!」と言った。
すると1年生2人は「ズルイ!」と言い
4年生の女の子は「私たちも一緒でしょ!」と少し怒った。
1番お兄さんだった5年生の子はなにも言わなかった。
けれどそれから3年間花火大会は中止だった。
何故なのかは知らない。
予算とか
そうかもなぁ
小学校の子達とみんなで毎日のように遊んだ。
1番楽しかったのはかくれんぼ
彼女が体力がなかったため鬼ごっこはとても弱かった。
だからかくれんぼをよくした、村の人達はみんな知ってるので
よくかくまってもらったりした。
彼女はかくれんぼはすごく得意だった。
都会に住みたいなんていう考えは消えていった。
友達もできたし小学校のみんなとも仲良くなれたから
村のことがすごく好きになっていた。
そしてその頃にはもう中学校に上がる頃だった。
村には中学校はなく離れた街まで行かなくてはならない。
全く新しい環境で知らない人ばかりの中学校。
少しの不安はあったけれど1番仲のいい友達も一緒だから不安よりも楽しみの方が大きかった。
普通は両親と車で行くのだけれど彼女の母親は仕事で忙しく
入学式には出席出来ないと言うことだったので
2人で自転車で行くことにした。
これがまた結構きつい、けれどそれ以上にキツそうだっのが彼女だった。
体力のない彼女は「きっつ〜い」と言いながら時には自転車から降りて押したりした。
俺はと言うと「体力ないなぁ〜!」なんていつものように馬鹿にしたのだけれど
「凄い無理してるよね!」と彼女に見透かされたので正直に
「ごめんなさい」と謝った。
会話をしたらさらにキツくなるじゃんと思うかもしれないけれど、意外とこれがそうでもなかった。
すごくドキドキした、彼女と離れるとなにもやっていけないような気がしてた。
3クラスだったんだけれど俺と彼女は運良く同じクラスだった。
入学式を終えると、やったね!なんて2人で言いながら村まで自転車を漕いだ。
彼女は人柄も良かったけれど何より可愛かった。
今までは村には彼女と一つ上の女の子いなかったけれど
沢山の女の子の中に入ると彼女が如何に可愛いかがわかった。
そんな彼女と友達である俺は凄く誇らしかったけれど
俺には友達が出来ることはなかった。
登下校はもちろん彼女と2人でしていたが
学校で話すことはなくなっていった。
彼女と俺は部活には入らなかったので放課後は時間があった。
学校では話せないけれどそれだけで充分でとても楽しかった。
けれどある日をキッカケにその時間は失われた。
その日の会話の内容はよく覚えてる。
「花火大会、今年はあるかなぁ?」彼女が言った。
「う〜ん、どうなんだろ...」
「あったら2人で見に行こうよ!」毎年この言葉は彼女から聞いていた。そして毎年のように村ならどこでも一緒じゃん!なんて返したのだけれどその日は違った
「そうだねぇ〜」
彼女は驚きながらも嬉しそうに約束だよ!と言った。
ハッキリとはわかっていなかった。
3年間花火大会がなかったからか、それとも自分が大人になったからなのか。どちらも正解なのだけれど
この少しあとにハッキリとした理由がわかる。
俺はいつものように1人でいた。
すると1人のクラスメイトから声をかけられた。
「なぁ!話があんだけどさ、昼休み体育館裏に来てよ!」
初めて話しかけてもらったので嬉しくなった。
そして俺は昼休み体育館裏へ向かった。
村の小学校で2つ上の男の子だった。
いや、もう中学3年生なのだから男の子という表現は似合わないかもしれない、体は大きくガッチリとしていた。
後ろを振り向くと数人の3年生がいた。
2つ上の男の子、先輩は俺に優しく話しかけた。
「中学校はどう?楽しい?」
「はい、まぁ...」俺の声は自分でもわかるくらい震えていた。
優しい口調の裏側になにがあるかは安易に想像ができた。
「俺達はそういう関係じゃないです、仲のいい友達です」偽りのない言葉で返事をした。
少しの間を置くと先輩はこちらに歩いてきた。
「そっかぁ、良かった!安心したよ」
先輩はそう笑った。
「だから言ったじゃん!こんな眼鏡が付き合ってるわけないって!」と笑って言った。
「だって仲良いんだよ、こいつら登下校も一緒だしさ!」先輩は3年生達にそう返すと俺にこう言った。
「ねぇ、俺の言いたいことわかるかな?」
彼女には近付くなと言いたいのだろうと。
「そっかぁ!良かった良かった!それじゃもう行っていいよ〜」
俺はその言葉を聞いた時には涙が出ていた。
そんなことする奴現実に居るんだなあ
遅くてすみません
先輩が怖いからか、クラスメイトに騙されたからか
そんなのが理由じゃないと俺はすぐに気付いた。
そしてその時、彼女から誘われた花火大会をなぜ一緒に見に行くことにしたのかという理由もハッキリとわかった。
眼鏡で友達もいないダサい男の最低限の強がりだった。
この言葉を発した後、なにが起こるかもわかっていた。
そしてこの発言にデメリットしか無いこともわかっていた。
けれど言わなければ多分後悔していたと思う。
昼休みが終わった頃には体中ボロボロだった。
その日は、保健室の先生に滑ってコケたと言って早退させてもらった。
保健室の先生は多分、分かっていたと思う。コケただけじゃあんなにはならない。
涙を流す俺を両親が迎えに来るまで黙ってそばにいてくれた。
俺は部屋から出ることはなく帰ってもらった。
それから俺は学校を休み続けた、朝になると嘔吐を繰り返した。
彼女は毎日のように家に来てくれていたらしい。
俺は部屋から出ることなく、母親に彼女には帰ってもらうように言っていた。
それでか一緒に行けなくなったのは
嘔吐を繰り返す俺の背中をさすってくれた。
保健室の先生も家によく来てくれた。その先生とは話したりした。学校の話は持ち出さず下らない話をした。
母親はその手紙を毎回泣きながら俺に渡してくれた。
今思えば、絶対読んでたな、あの母親。
手紙の内容は彼女のことばかりだった。
最近この本読んだよ!最近こんな勉強したよ!テストは何点だったよ!そして手紙の最後には必ず
俺君に会いたい、花火大会絶対一緒に行こうね、
そんな締めくくりだった。
そして明日は必ず学校に行こうと思った。
けれど翌日になると嘔吐してしまう、学校には完全に行けなくなっていた。
そんなある日、いつもの様に保健室の先生が来てくれたのだけれど、その日は今までしなかった学校の話を始めた。
俺は少し不思議になって質問した。
「学校でなんかありましたか」
俺は「いいですよ、言ってください」と言った。
すると先生は口を開いた。
「あまり良くない噂が流れてるの、あなたのことについて...
だから学校に来て欲しいの」
その言葉の意味は俺には理解出来なかった、良くない噂が流れているのなら余計行きにくいじゃないか、そう思った。
先生はそれ以上何も言おうとはしなかった。
そこでようやく先生の言った意味がわかった気がした。
母親がこんなことを言ってきた。
「今年は花火大会あるってよ!」
恐らく、彼女と一緒に行けるね!という意味だったのだろう。
けれど手紙も持ってくることはなくなった彼女、
今更一緒に行ってくれるのだろうか...そう思いながらも
本当は一緒に行きたい、会いたいと言う気持ちが強かった。
花火大会の日、彼女の家を訪れることにした。
服も新しいものを買ってもらった。
中学1年っぽくないすごくカッコイイ服だった。
中学生にしては少し俺達は大人びていたのかもしれない。
そして久しぶりに外に出た。夕方だけれど暑かった。
会ったらなんて言おう、どんな顔して会おう。
そんな事を考えてたら彼女の母親が出てきた。
「久しぶり!俺君!」涙ぐみながら話しかけてくれた。
その姿を見ると俺まで涙が出そうになった。
「ついさっき、でかけたのよ!すれ違ったのかしら」と言ってくれた。
「ありがとうございます」と返して村を回ってみた。
そして花火大会が始まってしまった。
1度家に帰ったりしてみたがウチには彼女は来ていないと母親が言った。
探しても探しても見つからず、ずっと部屋に篭っていた俺は体力もなくなっていて、かなり疲れた。
明日また続きを書きます。
良ければまた明日来てもらえると嬉しいです。
また読みに来るわ
彼女を見るけることはできず走り回って疲れ果てた。
俺は近くにあった石に座った、丁度彼女と初めての話した場所だった。
気付けば涙が出ていた。
「体力ないなぁ〜」聞き覚えのあるセリフだった。聞き覚えのある声だった。俺がいつも彼女にいうセリフだった。
振り返るとニッコリと笑う彼女がいた。
浴衣姿をだった。とても可愛かった。
やっぱり私得意なんだな〜、なんて自慢げな顔をした。
涙を流すところを見られたくなかったからすぐに視線をしたにやった。
「元気だった?」彼女が言う
俺は黙って頷いた。
久しぶりに聞く声、久しぶりに見た顔
涙を抑えようにも抑えることが出来なかった。
涙を流す俺の横で静かに彼女は空を見ていた。
セミは俺に遠慮することなく鳴いている。
「会いたかったんだよ、寂しかったんだよ」
彼女の声はさっきまでとは違った。
顔を上げて彼女を見ると涙を流していた。
そしてその後彼女は声を上げて泣いた。初めて見た。
俺はただ黙っていることしか出来なかった。
俺は彼女の二三歩前を歩き、家まで送った。
彼女はまだ泣いていた。そして「ありがとう」と言った。
その日の夜は寝られなかった。あの時なんて言えば良かったのか、彼女は俺に会ってどう思ったのか。
色んなことを考えていた。再び涙が流れていた。
手紙を渡してくれた。母親はまた泣いていた。
また勝手に読んだんだなと思った。
けれど、手紙は封筒に入っており開けたあとはなかった。
表には俺の名前が書いてあった。
裏には彼女の名前と俺の知らない住所が書いてあった。
遅くまでありがとうございました
また明日書くのでよければ読みに来てください
また来ます
今から続きをゆっくりと書いていこうと思います
昨日は確か彼女からの封筒に入った手紙を母親から受け取ったところまで書いたと思うのでその続きからです。
裏面の住所は俺の知らない住所だった。
母親は涙しながら俺を見ていた。すぐに察することはできた。
昨日、彼女の母親に会ったとき彼女の母親が泣いていたことも頷ける理由もその時確信した。
彼女は引っ越したんだ...
彼女の家に向かって走った。もうその家に彼女がいないことは分かっていたけれど、いてもたってもいられなくなった。
彼女の家はいつもと変わらぬ姿だった。
けれどそこに彼女はいなかった。
立ち竦む俺に夏の日差しが容赦なく照りつけ
走ってきた俺の額には汗が滴り落ち、
頬には汗とは違うなにかがゆっくりと蛇行しながら流れていた。
今日の出来事を予兆させるものはなく
ただ切なさと寂しさに滲んでいた。
なぜ引っ越したのだろうか。なぜ言ってくれなかったのだろうか。なぜ昨日俺に会ってくれたのだろうか。
聞きたいことが沢山あったがそのどれもが
彼女からの手紙の中に書いてあるだろうと思った。
全く知らない住所を数分間眺めていた。
遠い遠い場所だった。俺の昔行きたいと思ってた都会だった。
手紙を読めば、俺の知りたいことは全てわかるはず、
けれど封筒を開けることは出来なかった...
彼女が引っ越す理由が俺だったのかもしれないと考えた。
あの日、先輩に俺は勇気を出して楯突いた。
けれどその日以降学校へは行かなかった。
もしかしたら俺のいない学校で彼女になにかあったのかもしれない。彼女が家に来てくれたのに拒み続けたからかもしれない。
そんな事を考えると怖くて、俺はまた逃げた。
理由はもちろん俺のためだ。
新しい中学校に夏休み明けから転入生として通った。
今度は中学校までは徒歩5分ほどだった。
両親と先生の勧めで部活にも入った。
最初は戸惑ったし抵抗もあった。相変わらずクラスでは1人だった。
勉強と部活に明け暮れる日々、暗い性格は少しづつ明るさを取り戻していったと思う。
そしてそれに反比例するように少しづつ心の中にある彼女への色んな気持ちが薄れていった。
勉強はそれなりにできた、まぁまぁいい高校へ入れた。
中学時代の友達数人とも同じ学校だった。
高校でも部活は続けた、またも勉強と部活に追われる日々。
友達も数人しかいなかったし部活ではベンチ、
高校では勉強は真ん中の方、ぱっとしないどこにでもいる普通の高校生だった。けれど楽しかった。
あっという間に部活は引退、そして受験勉強。
その頃にはすっかり彼女のことは忘れていた。
家からは離れ、一人暮らしも始めた。
初めてバイトにも挑戦した。
中学時代、高校時代は女の子と全く関わることはなかったけれど
バイト先で1ヶ月の間、短期で入っていた女子高生とは仲良くなった。
他愛もない会話ばかりだった。
「今日廃棄もって帰っていいですかね?」
「コンビニ弁当は健康に良くないぞ、やめとけやめとけ」
「でも美味しいじゃないですか!」
そんな下らない会話ばかりだった。
バイトはすぐにやめた。大学受験の勉強があるからだろう。
それ以降俺は女の子と関わることは全くなくなった。
大学でも友達はいなかったし、少しづつ大学をサボるようになった。
留年にはならないよう最低限は出席し、なんてことのない毎日を過ごしていた。
中学、高校時代とは違い時間の流れがとても緩く感じた。
これから3年間、つまらない日々を過ごすのだと思うとさらに憂鬱になった。
大学には最低限通いながら、それ以外の日は
部屋にこもる日々が続いた。
毎日なにか楽しいことないかな、なんて考えてた。
1年前バイト先が同じだった女子高生だった。
俺が驚いて声をかけると彼女はあまり驚いた様子は見せず
「お久しぶりです」と微笑んだ。
まさかの再開、俺も少し嬉しくなった。
「後輩よ、合格おめでとう」自慢げに返した。
もう合格発表から数ヶ月たっていた。
「遅いですよ!なかなか会えないから辞めちゃったのかと思いました。」と後輩が言った。
まさか覚えていてくれたとは思わず更に嬉しくなった。
彼女は講義があるからと俺に電話番号を書いた手紙を渡し、笑顔で走っていった。
その夜、後輩に電話をかけた。
俺は昔から喋るのは得意じゃなかったけれど
その後輩とは普通に話すことが出来た。
何故なのかバイトの時から少し不思議には感じていたけれど
会話に夢中になるとそんな疑問はあっという間に消えた。
時間が合えば後輩と一緒に昼食を取ったり
夜は他愛もないことを電話で話す仲になっていた。
続きはまた後で書きます。
遅くてすみません。
大学では1人じゃなくなり、夜も毎日電話をした。
後輩の誘いでバイト一緒に始めた。
バイトの時間も下らない会話をしていた。
「今日廃棄持って帰りますか?」
「あれ、後輩ちゃんいらないの?」
「コンビニ弁当は不健康ですからね!」得意げに、そして嬉しそうに言った。
成長したね、なんて言ってほしそうな顔をしていた。
不器用で口下手な俺、彼女も出来たことはなく女の子とちゃんと会話したのも後輩が2人目だった俺はそんな小洒落たセリフを言ってあげられるような男ではなかった。
後輩は不満な顔は見せず、えへへと笑った。
バイト中にはこんなこともあった。
後輩が店にかかってきた電話に出ると、どうやらクレームだったようだ。
電話の向こうでは「店長出せ!」と言っているようだった。
不都合にも店長はおらずレジには数人が並んでいたため俺は手が離せず、仕方なく後輩に代わりに謝罪しといてと言った。
後輩はわかりましたと合図し、電話を持ってバックヤードに下がっていった。
未だ後輩は電話でクレームの対応をしていた。
俺はしまったな、と思いながら電話を代わり店長のフリをしてクレームの対応に当たった。ようやく終わったかと思い電話を切ると
横で大泣きをしている後輩、そしてレジで対応してる人はおらず
店内の客にかなり怒られた。
後輩とはさらに仲良くなった。
ある日、後輩に「今度2人でどこか行きましょう」と誘われた。
正直嬉しかった。間髪入れず「行こう」と答えた。
2人で水族館に行った。初めての水族館だった。
ものすごく楽しかった。
初めて見たジンベイザメ、それを指さしながら
「先輩、イルカってこんな大きいんですね!」
いや、どう見てもイルカじゃないじゃん。初めてみた俺でもわかったぞ。と思いながらも目をキラキラさせる後輩に
「凄いなぁ」なんて同調してみたりもした。
もちろんその日の夜も電話をした。
電話の内容は水族館での話ばかりだった。
すごく楽しそうに嬉しそうに話しているのが電話越しでもわかった。
俺はその電話で「またどっか行こう」と言ってみた。
「はい、お願いします!」彼女の返事に少しほっとした。
少しの時間を見つけては2人でどこかに出掛けた。
後輩の買い物に付き合ったり、俺の服を選んでくれたり、
図書館に一緒に行ったり、カフェで一緒に勉強をしている時は
俺、大学生らしくなったなぁなんてニヤニヤした。
その年は例年以上に暑かった。
ある日彼女がバイト中に「今日花火大会があるんです、良ければ一緒に行きませんか!」いつもの様に誘ってくれた。
俺は「行こうか!」といつもの様に答えた。
けれどその時胸が少し傷んだような気がした。
それまで屋台が出るみたいだったのでそれも回ることにした。
バイトが6時に終わり、2人でそのまま屋台を回った。
周りはカップルばかりで浴衣を来ている人が行き来していた。
「なに食べよっか?」
「沢山あって悩んじゃいますね」
「よし、じゃあ一斉ので食べたいもの言おっか!」俺が珍しく提案した。
「せーの、焼きそば!(たこ焼き)」
後輩があまりに大声で叫んだもんだから周りのカップル達がクスクスと笑いながらこちらを見た。
「なんで、一斉ので言ったんですか?」彼女が笑いながら言った。
「確かに、なんでだろ?」俺も笑った。
その後は2人でかき氷を食べた。
彼女はいちご、俺はメロン、これも一斉ので言ったんだけれどやっぱり揃わなかった。
当たりは暗くなっていた。
「先輩行きましょう!」後輩が俺の手を引いて走り出した。
花火が見える位置までくると人で溢れかえっていた。
「やっぱり多いなぁ〜、まだ30分も前なのに!」
後輩は毎年この花火大会に来ているらしく、去年までのことを少し話してくれた。
「今年は良かったの?」そう俺が聞くと
後輩は黙ってうなづいた。
「先輩は?花火大会とか初めてですか?」
後輩から投げかけられたその一言に何故だか俺はドキッとした。
心臓が大太鼓を打ったような大きな音を上げ、
その音が体中にしみるような感覚だった。
「先輩!始まりましたよ!」その声をかき消すように
花火が大きな音をたてて夜空に咲いた。
とても綺麗だった。横を見ると後輩は目を輝かせながら花火を見ていた。
夜空に咲き、そのひとつひとつに歓声が上がった。
花火が終わると全員が拍手をしていた。
後輩もすごく嬉しそうに拍手していた。
俺もつられて拍手をした。花火が終わった頃にはさっきまでの不思議な感情は全くなかった。
「毎年見てんじゃないの?」俺が少しバカにしたように言うと
「今年は特に凄かったんです!」少し怒ったように言った。
「ほんとに、凄かったな」さっきの冗談を訂正する様に俺は言った。
初めて後輩からそう言われたので俺は少し戸惑った。
「え、だってもう遅いし、家汚いし」
「少しでいいんで!今日は電話じゃなくてなんかちゃんと話したいんです」後輩の圧に押され、仕方なく承諾した。
家に着くと少し待たせて部屋の掃除をした。
10分待ってて!と時間を貰ったものの10分で片付くような部屋じゃなかった。散らばってるものを積み上げ部屋の端に置くと
少しは綺麗に見えた。
「綺麗じゃないですか〜!」と笑った。
「適当に座って、お茶しかないけどいい?」少し先輩ぶってそう言った。
後輩は座らず俺の部屋を物色している。
「おい、あんま余計なもんみんじゃないぞ!」
「え!?なにがあるんですか!?」
「何もないけど」 全く意味の無い会話だった。
1つの部屋に男女で2人、俺は落ち着かなくて意味の無い言葉、質問を並べた。
後輩が珍しげに本棚を物色しだした。
「ま、まぁねぇ〜」凄くぎこちのない返事だった。
「どれがオススメなんですか!」後輩がこちらを振り返って聞いた。
「あ、ちょっとお手洗いお借りしてもいいですか?」と言った。
早く行きな、と後輩をトイレに送り、本棚に目をやった。
最近読んでなかったなぁなんて本を手に取ると
本の間から一封の封筒が落ちた。
その時、全てを思い出すような感覚が体を突き抜けた。
封筒を手に取り見ると、俺の名前が書いてあった。
裏には見覚えのある名前、そして見覚えのあるけれど全く知らない住所が書いてあった。
しっかりとわかった...
俺は深呼吸をした後、封を切り、中から手紙を取り出した。
「先輩、ありがとうございました!」
咄嗟に俺は手紙を隠した。
後輩はトイレから出てくるなりすぐにソファに腰掛けた。
トイレに行きたかったから落ち着かなくてうろうろしてたんだな、と思うと少し可愛く見えた。
「あれ?なに笑ってるんですか?」後輩がこちらを見て言う。
「ううん、何でもないよ!」そう言って後輩から少し離れた場所に座った。
後輩も当分の間、口を開けず下を向いていた。
後輩は何度かこちらの方を向いてなにか言いだそうとしながらも
何度もそのまま顔を落とすのを繰り返した。
俺は気付いてしまった。後輩が今からなにを言おうとしてるのか
今まで遊びで後輩と出かけたりしてきたわけじゃない。
そしてもちろん少しの好意も無かったのかと言われればノーとは答えきれないだろう。
けれど後輩がその言葉を言ってしまったら、俺は間違いなく後輩を不幸にすると思った。
それから後輩よりも先に俺が口を開いた。
「そろそろ、遅いし帰った方がいんじゃない?」
「で、でもさ帰れなくなっちゃうし、送ってくよ」
胸が痛かった。こんなこと言いたくなかった。
手紙を見つけていなければ...そんな気持ちと葛藤しながらも
俺は後輩をなんとか帰らそうとした。
「ほら、早く帰ろうよ」俺は後輩の言葉に食い気味で返した。
「先輩!」後輩が大きな声をあげ、こちらを見た。
「先輩...聞いてください」俺が言わせまいとしていることに気付いたんだと思った。後輩の目には涙が浮かんでいた。
「私、先輩のことが好きです...」
そして後輩はそれ以上言葉を続けなかった。
しばらくしてから後輩は部屋を出ていった。
「今日は楽しかったです、ありがとうございました」
そう言葉を残して。
後輩の思いを踏みにじった。
後輩を傷つけたくないから後輩を早く帰らそうとした。
それは違った、俺が傷付きたくないだけだった。
封筒を見たとき、あの時のことが蘇った。
自分が傷つかないように自分を守るために
俺はまた逃げた。
そして、また人を泣かせた。
毎晩していた後輩との電話もぷっつりと途切れた。
俺はなにも成長していなかった、自分が傷付くことを恐れてまた人を傷つけてしまった。
手紙も読むことができずにいた。
1週間くらい立った頃、後輩から電話があった。
2度3度携帯が鳴ったけれど俺は出ることができなかった。
ぼぉ〜っとしていた頭の中に色んな思い出が蘇ってきた。
走馬灯とは違う、鮮明にゆっくりと、
ゲームのエピローグのように俺の人生が再生された。
俺は封筒に手を伸ばした。
手紙を取り出すことはなく封筒を握って家を出た。
この間はごめんなさい。
少しだけ時間を下さい。
ケジメをつけさせて下さい。
身勝手だけれど後輩ちゃんが良ければもう1度2人で
出かけたい場所があります。
何月何日、昼の12時に〇〇駅で待ってます。
封筒の裏側に書いてあった場所に向かった。
俺の昔、住みたいと思っていた都会だった。
住所の示す場所までくると街からは少しハズレた場所まで来た。
そこには小さな家が建っていた。
都会にはないような古びた家だった。
その家の表札にはしっかりと封筒の裏側に書いてある名前が彫られていた。見覚えのある名前だった。
聞き覚えのある声が聞こえた。
玄関が開くと見覚えのある女性が出てきた。
彼女の母親だった。
「えっと...」と困った顔をした。
無理もない、最後にあったのは俺が中学1年生の頃だった。
俺もずいぶんと大きくなったんだなって少し誇らしくなった。
「突然すみません、覚えてませんか...」
そういうと彼女の母親は口に手をあて涙を流した。
「俺くん?俺くんだよね!」
「はい」そう返すと彼女の母親は俺を優しく抱きしめた。
「覚えててくれたんですね」そう俺が言うと
「忘れたことなんてないよ」とまた涙を流した。
「少し待ってて」そういうと家の中に戻っていった。
「暑かったでしょう、村の人たちはどう?」彼女の母親がそう問いかけてきたので俺は今は村に住んでいないこと、中学校、高校、大学と進んだことを話した。
もちろん大したことのない俺の人生、つまらないであろう話を
嬉しそうに、そして時々涙を拭いながら聞いてくれた。
「本当に大きくなったわね」と言った。
「体だけですけどね」と俺は笑った。
都会とはいえ少し外れたところだったため
セミが凄く鳴いていた。俺達はそのセミの声を遮ることなく黙っていた。彼女の母親はまた涙を流した。
俺の質問に少し間を置いて
「そうねぇ、今はいないのよ」と笑った。
「残念ねぇ、今日帰っちゃうの?」と続けた。
「いえ、2日後までは暇なので」と俺は返した。
彼女の母親がそう言ってくれたので後輩を誘った2日後の朝まで彼女の家に泊まらせて貰うことにした。
その日は電車に揺られて疲れたからかすぐに眠ってしまった。
「さ、しっかりと食べて!」笑顔で進めてくれた。
ご飯は美味しかった。起きた時間が昼過ぎだったから形状は昼ごはんなのだけれど、起きたばかりの俺に唐揚げは少し重かった。
その日は彼女の母親と街にでかけた。
夜ご飯を一緒に考えて買出しをした。
お刺身に豚カツという豪華なメニューになった。
ちゃんと3人分用意した。
7時には完成したのだけれど彼女がまだ帰ってこなかったので少し待つことにした。
30分くらいして彼女の母親が
「冷めちゃうから食べちゃいましょ!」と言った。
豚カツはすでに冷めかけていたけれど美味しかった。
彼女が帰ってくるのを待った。
もう明日の朝には帰らなければならない、12時を回った頃だろうか、彼女の母親が話しかけてきた。
「そろそろ寝たほうがいんじゃない?明日、朝早いんでしょ?」
「そうですよね、すみません、でももう少し待たせてください」
そう俺が返すと彼女の母親は隣に座ってくれた。
「明日の朝起きたら帰って来てたりしますかね」
彼女の母親はなにも言わなかった。
俺はその後すぐ眠りについた。
次の日の朝、セミの鳴き声で目覚めた。
その日はいつも以上に暑くて、セミも元気だった。
そう言って俺は彼女の家を出た。
彼女の母親は「ありがとう」と言い
これ持っていってとお弁当を渡してくれた。
目には涙が浮かんでいた。
俺はお弁当を受け取ると電車で揺られ後輩と待ち合わせた駅に向かった。
そういえば、とメールの受信ボックスを確認したけれど
後輩からのメールも着信も来ていなかった。
空に浮かぶ入道雲が水族館で見たジンベイザメのようで
空を見上げて待っていた。
すると「ジンベイザメみたいですよね」
そこには空を見上げる後輩がいた。
「同じこと考えてましたか?」と後輩は笑った。
「来ないかと思った」そう俺が言うと
「私も行かないつもりでいました」と再び空を見上げた。
他にも言わなければならないことは沢山あった。
あの日のことを謝らなければなからなかった。
けれどそれはあとで話そうと思った。
俺達は電車に乗りさらにある場所に向かった。
なにも言わなくても後輩は俺に付いてきてくれた。
少し歩くと懐かしい場所が見えてきた。
「ここ、俺の通ってた中学校なんだよ」
「へぇ〜!」なんてことない俺のセリフに後輩は気持ちのいい相づちを打ってくれた。
「ま、1ヶ月だけなんだけどねっ」俺は続けた。
結局1時間くらい後輩を歩かせることになった。
それなのに何も言わず後輩はただ付いてきてくれた。
数年ぶりだった。俺の育った村に帰ってきた。
なにも変わっていなかった。
後輩は「良いところですね」と言ってくれた。
それから俺は後輩の二三歩前を歩き村を回った。
村の人たちは俺のことなんて覚えていないだろうと思っていたけれど何人かは覚えていてくれた。
俺達に畑での作業を手伝わせてくれた。
いや手伝わされたのかもしれない。
後輩は凄く前向きだった、初めてやったと喜んだ。
手伝ってくれたお礼にと冷やしたきゅうりをくれた。
2人でかじりながらまた村の中を歩いた。
目を閉じて貰って手を引いた。
「開けていいよ!どう!」と言うと後輩は目を開けた。
俺達の目の前には向日葵畑が広がっていた。
「うわぁぁぁぁ!」後輩は凄く嬉しそうにこちらを見た。
「ジンベイザメ以上!」と後輩は目を輝かせた。
俺は橋から足を下ろし腰をかけると後輩も同じようにした。
そう言うと俺はこの村でのことを話した。
それを後輩は彼女の母親と同じように聞いてくれた。時には涙も流してくれた。
彼女と初めてあった日のこと、彼女とこの向日葵畑を見たこと、彼女と毎日のように遊んでいたこと、彼女が好きだったこと...
そして昨日彼女に会いに行ったこと。
俺は「そうだなぁ、まだ会えてないかな」と答えた。
だいぶ話し込んだんだろう、その頃には当たりは真っ暗だった。
「今日来たかったのには理由があるんだ」俺がそういうと
ヒュ〜という高い音と共に花火が夜空に上がっていった。
俺に何度も言っていた。俺も自然と涙が溢れた。
数分間後輩と花火を眺めた。
お互いの気持ちはお互いにわかっていた。
もう言葉なんていらなかった。
俺と後輩はキスをした。
俺達は別世界にいるように時間がゆっくりと流れ、そして静かだった。
唇が離れるとお互いに顔が赤くなっていた。
お互いに顔を見ることができなかった。
後輩は「会ってきてください」そう言ってくれた。
俺は立ち上がり、村の端まで1人で歩いた。
彼女からの手紙、何年間も読むことができなかった手紙。
あの時の彼女の気持ちを受け止めようと思った。
俺君がこの手紙を読んでいる頃には私はもう村にはいません。
お引越しをすることになりました。都会の方です。
だから俺君には最後にお手紙を書こうと思いました。
俺君と初めて会ったのは小学3年生の頃でしたね。
あの時私に探検に行きませんか!?と言ってくれたこと凄く覚えています。凄く嬉しかったです。
村の端まで歩いて沢山話しましたね。初めて話したのにそんな感じがしなくてそれから毎日がとても楽しかったです。
俺君とは沢山の思い出ができました。
向日葵畑を見に行ったこと、凄く感動しました。
かくれんぼをしたこと。2人で中学校まで登下校したこと。
その中でも1番は花火を一緒に見たことです。
結局、3年生の時以来一緒に見られませんでしたね。残念。
でも俺君とは小学校のみんなと見た花火は一生忘れません。
私は俺君に迷惑をかけてたことがありましたね。
私が体力がなくてなにをするにもすぐ疲れていました。
その度俺君は「体力ないなぁ〜」と言いながら
私を気遣ってくれました。優しくしてくれてありがとう。
実は私、病気だったみたいです。重い病気で体力がなくて
今回都会の大きな病院に入院することになりました。
こんなこと言ったら俺君に嫌われると思って言えませんでした。
本当にごめんなさい。でも俺君との思い出があるから
俺君が居てくれたから私はがんばれます。
だから俺君も頑張って!
俺君、今まで本当にありがとう。
今までなかなか言えなかったけれど私は俺くんのことが大好きです。
来年は絶対2人で一緒に花火大会に行こうね!
中学1年生のままで幼く感じた。
手紙を読み終えると涙が溢れていた。
ふと思い出し彼女の母親に渡された弁当を開けると
その中にはやっぱり手紙が入っていた。
震えたようなか弱い字から手紙を書く彼女の姿が浮かんだ。
俺君へ
久しぶり、お元気ですか?
私は今必死に病と闘っています。
この手紙を読んでいる頃には私は恐らくこの世にはいません。
俺君に黙って村を出たこと後悔しています。
ちゃんと話しておけば良かったそう思ってます。
成長した俺君は凄くかっこいいんだろうな!
1度でいいから見てみたかったです!
俺君、私は俺君と出会えて良かったです。
俺君と会えたからここまで頑張れました。
俺君と会えたからとても幸せな人生でしまた。
伝えたいことはたくさんあるけれどこれだけ言わせてください。
大好きだよ俺君。そしてありがとう。
切ない...
その花火は大きく、そして力強く夜空に咲いた。
まるで彼女のようだった。
「なぁこの季節は向日葵が咲くんだ。それに花火大会がある。凄く綺麗なんだ。」
俺は小さくそう呟やいた。
ある女性に人生を変えてもらった話。
この題名と内容をどう解釈するかは読んで下さったみなさんひとりひとりに任せたいと思います。
そしてこの話を読んでなにか感じ取って貰えることが出来たならばと思います。
遅くまでありがとうございました。
つまり変えた女性は彼女ちゃんのお母さんだね
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