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カマキリ「ん? クロオオアリじゃん」
ハリガネムシ「どうしたんすか?」
アリ「実はオレたちの巣が、ヒアリとかいう奴らに襲撃されちまったんでさ!」
アリ「頼む! あのヒアリの野郎どもを追い払うのを、手伝ってくれ!」
カマキリ「ああ、あのトランプに大統領選で負けたっていう」
ハリガネムシ「それヒラリー」
ハリガネムシ「南米が原産のアリなんすけど、毒性がとても強いらしいんす」
カマキリ「なんでそんなに詳しいんだよ」
ハリガネムシ「こないだ原っぱに落ちてたスマホで、Wikipedia見たんす」
カマキリ「なんで南米のアリが日本の原っぱにいるんだよ」
ハリガネムシ「船のコンテナとかに混ざって、入ってくるケースがあるらしいっすよ」
ハリガネムシ「やたら凶暴らしいんで、放っておけば原っぱがメチャクチャにされるかもしれねっす」ウネウネ
カマキリ「ふうん……」
アリ「引き受けるといってくれ! こんな仕事頼めるのは、あんたたちしかいねえ!」
アリ「報酬は、ウチの巣に貯蔵してある食料でどうだ?」
カマキリ「……いいだろう」
カマキリ「海外の奴らに日本昆虫の恐ろしさを思い知らせるのも悪くねえ」ニヤッ
ハリガネムシ「オレは昆虫じゃないけど、やってやるっす!」ウネッ
ヒアリA「クックック、ここはなかなか居心地がいいな!」
ヒアリB「おうよ! ここを拠点に、日本の昆虫界を支配してやろうぜ!」
アリ「ほら、あいつらだ……」
カマキリ「なるほど、赤みがかってて凶悪そうだな」
ハリガネムシ「いかにも特定外来種って感じっす!」
アリ「こっちも兵を集めて、作戦を……」
カマキリ「兵? 作戦? いらねーよ、そんなもん。なぁ、ハリガネ?」
ハリガネムシ「オレたち二匹だけで十分っす!」
アリ「えええ!?」
カマキリ「いくぜ、相棒!」
ハリガネムシ「おうっす!」ウネウネ
ヒアリA「なんだてめぇら?」ジロッ
ヒアリB「なんか用か?」ギロッ
カマキリ「不法滞在してる外国蟻には出てってもらおうと思ってな」
ヒアリA「カマキリ如きがオレたちを追っ払う!? おもしれぇ、やってみやがれ!」
カマキリ「いっとくが……俺の鎌は鉄をも切り裂くぜ!」シャキンッ
カマキリ「ずらああっ!」
ザシュッ!
ヒアリA「ぐああっ……!」
ハリガネムシ「巻きついてやるっす!」ギュゥゥゥゥ…
ヒアリB「ぐるじぃぃぃぃぃっ!」ミシミシ…
ヒアリ隊長「ずいぶん派手に暴れてるじゃねぇか……日本人虫ども!」
ヒアリ隊長「だがこれまでだ! なにしろこっちは100匹以上いるんだからな!」
カマキリ「あいにくだが、俺たちは大勢を相手するのが得意でね」
カマキリ「ハリガネ、合体技だ! お前を鞭代わりにするぞ!」
ハリガネムシ「オッケーっす!」ウネリッ
カマキリ「細長〜いこいつを、俺の鎌でブン回したら……こうなる!」
ハリガネムシは読んで字の通りめちゃくちゃ硬いぞ
ズガガガガガガッ!!!
「がはっ!」 「ぐはぁ!」 「ぎゃああっ!」 「ぎゃはっ!」 「ごぶっ!」
ヒアリ隊長(我が巣の主力部隊が一瞬で壊滅だとぉ……!?)
カマキリ「故郷へ帰るんだな……お前らにも家族がいるだろう」
ヒアリ隊長「わ、分かった……このまま港へ行って、南米に帰るよ……」
ヒアリ隊長(日本か……取るに足らない島国だと思っていたが、こんな連中もいたとは……)
ヒアリ隊長(祖国に残ってる同志にも、日本に行くのはやめとけ、と伝えておくか)
カマキリ「なんのなんの、あれぐらいちょろいもんよ」
カマキリ「んじゃ、仕事終わりに……ハリガネ、もう一回寄生してくれや!」
ハリガネムシ「え〜……またっすかぁ? 腹に入るのも楽じゃないんすけど」ウネウネ
カマキリ「仕事後のクールダウンってやつだよ、早くしろ!」
ハリガネムシ「ったく、ワガママなんだから……」
アリ(ド助平のカマキリと、寄生虫のハリガネムシの友情、か……)
アリ(この二匹は……まさしく原っぱの最強コンビだな)
おわり
<原っぱ>
バッタ「でやぁっ!」
ピョコンッ
バッタ「ダメだ! 全然飛距離が伸びない!」
バッタ「こんなんじゃ、今度のジャンプ選手権で優勝できない……!」
バッタ「なんとかスランプを克服しなきゃ……!」
バッタ「これまで数々の依頼をこなしてきたあなたたちなら、なんとかなるんじゃないかと……」
カマキリ「わざわざ来てくれたのは嬉しいが、ジャンプって俺の専門外だからなぁ」
カマキリ「ハリガネ、なんかいい案あるか?」
ハリガネムシ「そうっすねえ……」ウネウネ
ハリガネムシ「寄生虫業界にこんな格言があるんす。“寄生は焦らずじっくりと”って」
カマキリ「今作ったんじゃねえだろうな」
ハリガネムシ「ホントにあるんすよ!」
バッタ「うーむ、一理あるかも」
ハリガネムシ「つーわけで、オレで縄跳びして下さいっす!」
カマキリ「なるほど、お前ってロープみたいだもんな」
バッタ「いいんですか?」
ハリガネムシ「どうぞどうぞ!」ウネリッ
ピョンッ ピョンッ ピョンッ ピョンッ ピョンッ
バッタ「うん……よくなってきた」
バッタ「ハリガネムシさんのおかげで、ジャンプのコツを掴めてきましたよ!」
ハリガネムシ「そいつは光栄っす!」
カマキリ「…………」
バッタ「今日の練習、終了っと……」
カマキリ「どうだ? ジャンプ力は上がったか?」
バッタ「たしかに上がりましたけど、まだ優勝を狙えるレベルではないですね」
カマキリ「だよなぁ? はっきりいって、お前にはジャンプの才能ないよ」
バッタ「えっ……」
カマキリ「俺たちもさ、ヒマじゃねえんだ。ずっと一つの依頼に関わってるわけにゃいかねえ」
カマキリ「これ以上、才能ない奴に付き合ってらんないし、お前のことは食うことにしたわ」シャキンッ
バッタ「そ、そんなっ!」
ハリガネムシ「カマキリさん、ダメっすよ!」
カマキリ「いただきまぁぁぁぁぁす!!!」グワァッ
シュバァッ!
バッタ「え……」
ハリガネムシ「た、高い……!」
バッタ「…………!」スタッ
バッタ「自己ベストより、20cm以上高く飛べた……!」
ハリガネムシ「すごいっすよ! 今のジャンプなら優勝間違いなしっすよ!」ウネウネ
カマキリ「思った通りだ」ニヤッ
バッタ「ど、どういうことです!?」
カマキリ「ハリガネムシの縄跳びでジャンプフォームを整えたお前が絶体絶命になれば――」
カマキリ「今までで最高のジャンプを繰り出せるかも、と思ったんだ」
バッタ「そうだったんですか!」
ハリガネムシ「でも、もしビビって飛べなかったらどうしてたんすか?」
カマキリ「そりゃもちろん食ってたよ。自然界は厳しいんだ」
バッタ「…………」ゾーッ…
バッタ(いつでもあのジャンプをできるように、この恐怖を忘れないようにしとこう……)
ハリガネムシ「ジャンプ選手権で、みごとあのバッタ君が優勝したらしいっすね!」
カマキリ「あーあ、余計なことしちゃったかもな〜」
カマキリ「俺があいつを食いたくなっても、あのジャンプ力を捕まえるのは不可能に近いぜ」
ハリガネムシ「またまた〜、心にもないことを」ウネウネ
カマキリ「ふんっ!」プイッ
おわり
<原っぱ>
メスカマキリ「ねぇ〜ん」ウフンッ
カマキリ(おっ、美人!)
カマキリ「なになに?」
メスカマキリ「私と……交尾しない?」
カマキリ「ぐへへへ……するする!」
ハリガネムシ「はいっす」ズルズル…
ハリガネムシ「ところで、ハリガネムシに寄生されたカマキリって生殖能力なくなるらしいんすけど」
カマキリ「そうなの?」
ハリガネムシ「Wikipediaに載ってたっす」
カマキリ「またそれかよ」
ハリガネムシ「なんで交尾できるんすか?」
カマキリ「そりゃもちろん、俺はすげえからだよ!」
ハリガネムシ(バカらしくて、突っ込む気にもならない……)
ハリガネムシ「じゃ、オレは邪魔にならないよう、あっちで待ってるっす」ウネウネ
カマキリ「悪いな! いやぁ〜、モテる男はツライぜ」
…………
……
カマキリ「ふぅ……」
メスカマキリ「よかった?」
カマキリ「ああ、よかったよ。今までで一番だった」
メスカマキリ「じゃあ……結婚してくれる?」
カマキリ「へ、なんで?」
メスカマキリ「だって……交尾ってそういうもんでしょ? 永久の愛を誓う儀式でしょう?」
カマキリ「オイオイ、いつの時代の話だよ。今時、交尾なんてしょせん遊び……」
メスカマキリ「遊びィ!?」ビキビキッ
カマキリ「え」
メスカマキリ「アンタ、私の心を弄んだのね!!?」
メスカマキリ「許せぬ……食ってやる!!!」
カマキリ「ひっ!?」
シュバッ! ビュオッ! ブオンッ!
カマキリ「あっぶねえ! なにしやがる!」
メスカマキリ「乙女の純情を弄んだ罪は重いわ……」
メスカマキリ「せめて、私の栄養になることで、罪を償いなさいな!」ギロッ
カマキリ(話は通じそうもねぇな……)
カマキリ(女に暴力振るう趣味はねぇが、命がかかってんなら話は別だ!)
カマキリ「かかってきやがれ!」シャキーン
カマキリ「うおおおおおおっ!」シュバッ
ギィンッ!
カマキリ「ぐ……!?」ミシッ…
メスカマキリ「アンタの鎌はこの程度? とんだナマクラね」
カマキリ「ウソだろ……俺の鎌は鉄をも切り裂くのに……」
メスカマキリ「お生憎様、私の鎌は金剛石(ダイヤモンド)をも切り裂くのよ!」
シュバァッ!
カマキリ「…………!」ブシュッ…
カマキリ(ヤバイ……この女、俺より強い!)
メスカマキリ「逃がすかコラァァァッ!」ドドドッ
カマキリ「ハリガネ! ハリーッ! ハリアーップ!」タタタッ
ハリガネムシ「どうしたんすか!?」ウネウネ
カマキリ「遊びのつもりで交尾したらえらいことになった! 助けてくれぇ……」
メスカマキリ「全身丸ごとバリバリ食ってやるゥゥゥゥゥ!」ドドドドドッ
ハリガネムシ「ありゃあ……二人で戦ってもどうしようもないっすよ」ウネッ
カマキリ「だ、だよね……」
メスカマキリ「クソオスは食って、ハリガネムシの方はバラバラに切り刻んであげるわァ!」
カマキリ「うう……」ジリ…
ハリガネムシ「ううう……」ウネ…
ハリガネムシ(二人とも助かるには……これしかないっす!)
カマキリ(頼む!)
【異常行動】ニートの友達が毎週6時間かけて徒歩で会いに来るんだが・・・
メスカマキリ「あん?」
カマキリ「このハリガネムシを見てくれ! これが……俺の気持ちだッ!」
ハリガネムシ「…………」ウネリッ
メスカマキリ(ハリガネムシが、ハートマークの形に……!?)
メスカマキリ(そうか……こういう凝った告白をするために、逃げるフリをしていたのね!)キュンッ
カマキリ「ゆ、許して下さいますか……?」
メスカマキリ「許してあげるわ……ダーリンッ!」チュッ
カマキリ(助かったぁぁ……)
ハリガネムシ(もう少しで二匹揃って、バラバラにされるとこだったっす……)
カマキリ「あの後、婚約しちまった……ま、しゃーない。ヤッた以上、男として責任は取らなきゃな」
ハリガネムシ「式のスピーチはオレがやるっすよ」
カマキリ「頼むわ」
ハリガネムシ「歌はどうするっすか?」
カマキリ「そうだな……テントウムシにでも頼むとするか」
おわり
<原っぱ>
少年『ハァ……』
少年『どうしよう……』
カマキリ(ん? 人間のガキがここに来るなんて珍しいな)
少年『うわっ!? カマキリ!?』
カマキリ『そんなビックリすることねえだろ』
少年『なんでカマキリが人間の言葉を話せるの!?』
カマキリ『そりゃまあ……勉強したからだよ。この原っぱには人間の言葉を話せる奴多いぜ』
少年『へえ〜』
カマキリ『騒ぎになるから……友だちには内緒だゾっ!』
少年『う、うん(性格はかなりうざそうだ)』
少年『実はね、自由研究の課題で悩んでるんだ』
カマキリ『自由研究ゥ〜?』
カマキリ『夏休みでもねえのに、なんでそんな課題が出てるんだよ』
少年『うちの先生、厳しくて……そういう宿題をしょっちゅう出すんだ』
カマキリ『なるほどねえ……で、ネタがなくて困って、こんな場末の原っぱに来たわけだ』
少年『うん……』
カマキリ『じゃあ、俺の写真でも撮ればいいじゃねえか。今時のガキはスマホ持ってんだろ?』
少年『持ってるけど……カマキリの写真じゃ平凡すぎるしなぁ……』
カマキリ『へ、平凡……』カチン
カマキリ『そこにどっかの人間が捨ててったコップが落ちてるだろ』
少年『うん』
カマキリ『そのコップに水を入れてきな』
少年『なんで?』
カマキリ『いいから!』
少年『わ、分かったよ』
カマキリ『オッケー』
カマキリ『そしたら俺を持って、俺の尻を水につけるんだ』
少年『分かった』
少年『つけるよ〜』チャプ…
カマキリ『すると――』
カマキリ『あ”っ! ギンモヂイイッ!』ビクビクッ
ハリガネムシ『はいっ、飛び出したっす〜!』ウネウネ
少年『うわっ!? カマキリのお尻から変なのが出てきた!』
カマキリ『こいつはハリガネムシっつう、カマキリとかによく寄生してる虫だ』
カマキリ『どうだ? 面白いだろ?』
少年『すっごーい! こんなのはじめて見た!』
ハリガネムシ『大丈夫じゃないっすよ。普通は栄養奪われて、最終的に死ぬっすよ』
少年『じゃあなんで、このカマキリは元気なの?』
ハリガネムシ『このカマキリさんは……とても生命力があって、ド助平だから――』
カマキリ『誰が助平だ!』バキッ
ハリガネムシ『いでっ!』
少年『アハハ、仲いいんだね!』
カマキリ『まあな』
ハリガネムシ『もう長い付き合いっすからねえ』ウネウネ
ペチャクチャ… アハハハハ… ペチャクチャ… ハハハハハ… ウネウネ…
カマキリ「ああ、久々にいい人間を見たよ。将来が楽しみだな」
カマキリ「今度来たら……女の口説き方でも教えてやるか!」
ハリガネムシ「“女の尻への敷かれ方”のがいいんじゃないっすか?」
カマキリ「なんだとォ!?」バキッ
ハリガネムシ「いでっ!」
おわり
<原っぱの池>
「う〜ん……」 「苦しい……」 「たすけてえ……」 「吐き気が止まらない……」
カマキリ「こいつはひでえ……」
カエル「でしょう? カエルも魚もみんな体調を崩しちゃったゲロ……」
ハリガネムシ「いつからこうなったんすか?」
カエル「この池とつながってる小川の近くに、小さな工場ができてからだゲロ……」
カマキリ「工場か……怪しい、怪しすぎるな」
ハリガネムシ「行ってみるっすよ!」ウネッ
コソッ…
カマキリ「ここか……会社名からすると、化学薬品の工場みたいだな」
ハリガネムシ「小さいながら、いかにも最新設備が整ってるって感じっすね」
ワイワイ… ガヤガヤ…
カマキリ「ちょうどいいところに人間どもがやってきたぞ」
カマキリ「どれ、会話を盗み聞きしてやるか」
ハリガネムシ「おうっす!」ウネッ
工場長『ここで試作し、うまくいった薬品は本工場で本格的に生産させ――』
工場長『失敗作はそこらの小川に捨ててしまえばいいという寸法だ』
部下『ええ……ここはほとんど人が立ち入りませんから、バレる心配もありません』
部下『劇薬をまともに廃棄すると、コストがかかりますからなぁ』
工場長『おかげで、うちの会社はさらに儲かるというわけだ!』
ハッハッハッハッハ……
カマキリ「…………」
ハリガネムシ「…………」
ハリガネムシ「どうするんすか?」
カマキリ「決まってんだろ……あの工場はブッ潰す! 人間どもの好きにはさせねえ!」
ハリガネムシ「さすがっす!」ウネウネ
ハリガネムシ「だけど、オレたちだけで乗り込むんすか? ちょっと心細いかも……」
カマキリ「今回ばかりは助っ人が必要だろう」
ハリガネムシ「奥さんを?」
カマキリ「あいつがいりゃ百人力だが、あいつ妊娠させちゃったからなぁ……今は頼れねえ」
カマキリ「こうなりゃ昔馴染みにあたってみるか……」
カマキリ「いや……お前の力を借りたい。この原っぱが滅ぶかどうかの瀬戸際なんだ」
スズメバチ「ククク、変わったもんだ……」
スズメバチ「かつては“切り裂き魔”と呼ばれてたオメェが原っぱを守るために戦うとはな……」
カマキリ「昔の話はよせ」
ハリガネムシ(カマキリさんにも、尖ってた時代もあったってことっすねえ……)ウネウネ
〜
カマキリ「頼む、軍曹……あんたの力を貸してくれ!」
カマキリ「あんただって、自然が壊されてくのを見るのは我慢ならないだろう」
アシダカグモ「よかろう」
アシダカグモ「久しぶりにゴキブリ以外と戦いたかったところである!」ビシッ
カマキリ「恩に着るぜ、軍曹!」
ハリガネムシ(いやぁ〜、このクモさんは怖そうっす)ウネウネ
<工場>
カマキリ「よし……準備完了だ」
カマキリ「スズメバチと軍曹は、なるべく大勢の人間をひきつけてくれ!」
スズメバチ「オッケェ〜イ」ブブブ…
アシダカグモ「工場に乗り込むのは、貴様たちに任せたぞ」
カマキリ「ああ、あの工場長は俺たちがブッ倒す!」
ハリガネムシ「任せるっす!」
カマキリ「――作戦開始だ!!!」
スズメバチ「さぁ〜て、どんどん刺してやるよォ!」
社員A『うわっ、スズメバチだ! でかいぞ!』
社員B『殺虫剤を……!』
スズメバチ「遅いぜェッ!」チクチクチクッ
スズメバチ「アナフィラキシーショックを起こす前に、病院行くこったなァ!」ブブブ…
シャカシャカシャカ…
アシダカグモ「高速足払い!」シャカシャカシャカ
社員C『いだっ!』ステンッ
社員D『ぎゃあっ!』ゴロンッ
アシダカグモ「フン……ゴキブリを相手するより容易いわ!」
アシダカグモ(後は任せたぞ……カマキリとハリガネムシ!)
工場長『なんだこの騒ぎは! どうなっておるのだ!?』
部下『どうやら原っぱの虫たちが、この工場に攻撃を仕掛けてきているようです!』
工場長『なんだとォ!? おのれぇ、ムシケラどもが……』
カマキリ『さぁ、年貢の納め時だぜ、悪党ども!』
ハリガネムシ『そうっすよ!』
工場長『な……カマキリと……サナダムシ!? なんで人間の言葉を!?』
ハリガネムシ『ハリガネムシっすよ!』ウネウネ
カマキリ『大人しく工場をたたむのならこのまま見逃してやってもいいが……』
工場長『……ふざけるな! ムシケラに人間が屈服するなどありえぬ!』
工場長『この工場は薬品工場! 市販されてない強力な殺虫剤だってあるのだァ!』サッ
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
カマキリ「ぐ……ッ! ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」
カマキリ(結構毒性が強い! こりゃいくら俺でも、あまり吸うとヤバイかも……)
ハリガネムシ「大丈夫っすよ! オレが体内に入って、ある程度毒を引き受けるっす!」モゾモゾ…
カマキリ「……ありがとよ、相棒!」
カマキリ『俺とハリガネは二匹で一つ! 二匹だから耐えられたんだぜ!』
カマキリ『この……ムシケラにも劣る外道がァ!!!』
ズバァッ!
工場長『ぐはぁっ!』ドサッ
カマキリ『ふん、あっけねえな』
ハリガネムシ『この工場はもう終わりっす!』
工場長『ぐふっ……こんなムシケラにやられるとは……!』
工場長『ならば化学薬品に火をつけて、この工場ごと原っぱを焼き尽くしてくれるわぁ!』シュボッ
ボワァァァァァッ!!!
カマキリ「なにいいいいいいい!!?」
ハリガネムシ「や、やばいっす!」
カマキリ「あのクソ人間ども! やるだけやって逃げやがった……!」
ハリガネムシ「火の勢いが止まらないっす! このままじゃ原っぱが火の海になるっすよ!」
スズメバチ「チッ……こりゃ、どうしようもねェぜ」ブブブ…
アシダカグモ「吾輩にも妙案は思いつかぬ……」
カマキリ「…………」
カマキリ「こうなったら……」
カマキリ「ハリガネ、俺の脳に寄生しろ!」
ハリガネムシ「え!?」
カマキリ「そうすりゃ……あの火を消せるような水の在りかを探し出せるかもしれねえ!」
ハリガネムシ「だけど……脳への寄生は危険っすよ! しくじったら後遺症が残るかもしれないし」
ハリガネムシ「下手すりゃマジで死ぬかも……」
カマキリ「……ハリガネ」
カマキリ「お前は俺の相棒だ……もしお前の寄生によって命を落としたとしても」
カマキリ「俺に一片の悔いもねえ! ――やってくれ!!!」
ハリガネムシ「……分かったっす!」
ハリガネムシ(カマキリさん……あんたの覚悟、しかと受け取ったっす!)モゾモゾ…
ハリガネムシ(この寄生、絶対成功させるッ!)
ハリガネムシ(脳に……侵入!)ズキュゥン
カマキリ「……水っ! 水が飲みたい! 水はどこだぁ〜!?」
カマキリ「お!? こっちに水がありそうだ!?」カサカサ
カマキリ「これは……水道管!!!」
カマキリ「こいつを俺の鎌で切り裂けば――」
ザシュッ!!!
ブッシャァァァァァァァァァ!!!
スズメバチ「すげぇ! 噴水みてェに水が出てきやがった!」
アシダカグモ「水道管を探し当てたか、見事ッ!」
ブッシャァァァァァァァァァァァ!!!
ハリガネムシ「成功っすね! 火が広がるのを食い止められたっす!」ウネウネ
カマキリ「ああ……しかも俺の脳にも異常はねえようだ! ありがとよ!」
ハリガネムシ「そりゃあ、相棒を死なせられねえっすよ!」
ハリガネムシ「もしあんたを死なせちまったら、オレは自害してたっす!」
カマキリ「ハリガネ……」ジーン…
ハリガネムシ「――って、火がこっちにも来たっす!」ウネウネッ
ハリガネムシ「スズメバチさんと軍曹さんは先に脱出したっす! オレらも早く!」
カマキリ「そうだな!」
バッタ「脱出なら、ボクに任せて下さい! さ、つかまって!」ババッ
ハリガネムシ「バッタ君、来てたんすか!」
バッタ「これだけの事件が起きてたら、そりゃ来ますって!」
カマキリ「すまねえ!」ガシッ
バッタ「今のボクは……あの時よりさらに飛べます!」
ピョーンッ!
ブッシャァァァァァァァァァァァ!!!
カマキリ「水道管を切り裂いて、水をぶっかけたまではよかったが……」
カマキリ「予想以上に火の勢いが強すぎる! 炎が原っぱに燃え移るのも時間の問題だ!」
アリ「オレたちも総出で消火作業にあたってるんだが……」カサカサ
カエル「まさに焼け石に水だゲロ〜」ピョンピョン
カマキリ(ちくしょう、せっかくあのクソ工場は潰せたってのに!)
カマキリ(結局、原っぱはなくなっちまうのか……)
カマキリ「ん? ……この音は?」
ハリガネムシ「消防車っす!」
カマキリ「だけど、誰が通報を!?」
少年『ボクだよ!』
少年『また原っぱに遊びに来たら、火事になってるから驚いちゃった!』
少年『119番したから心配いらないよ! もうすぐ消防車が駆けつけてくる!』
カマキリ『よ、よかった……!』ホッ
カマキリ「ふぅ〜……やれやれ」ドサッ
カマキリ「俺たち二匹でかっこよく原っぱを救うつもりが……みんなに助けられちまったな」
ハリガネムシ「なぁ〜に、いってんすか!」ウネウネ
ハリガネムシ「これも今まで、オレたちがやってきたことが実った成果っすよ!」
カマキリ「へっ……そういうことにしとくか」
ハリガネムシ「さ、みんなのところに行くっすよ! オレたちを待ってるっす!」ウネッ
カマキリ「おう!」カサッ
こうして原っぱの自然は守られた――
…………
<原っぱ>
ハリガネムシ「カマキリさん!」
カマキリ「ん?」ソワソワ
ハリガネムシ「例の工場をやってた会社、倒産したみたいっすねー、ざまあっす!」ウネウネ
カマキリ「そりゃそうだろ! あんだけの不祥事やらかしたんだからな!」
カマキリ「あの工場長も、放火やらなんやらでムショ行きだしな!」
カマキリ「さいわい池の汚染もそこまで深刻じゃなかったし、とりあえずめでたしってとこだな」
ハリガネムシ「そっすね!」
カマキリ「…………」ソワソワ
ハリガネムシ「さっきから妙にそわそわしてるっすね。どうしたんすか?」
カマキリ「実はさ……今日あたり女房が出産するかもしれねえんだ」
ハリガネムシ「えーっ!?」
カマキリ「でもさ……出産に立ち会うってなんか照れ臭いし……カマキリの卵ってグロイし……」
ハリガネムシ「なーにいってんすか! とっとと帰るっすよ。ヒッヒッフーっすよ」
カマキリ「分かった、分かった。ところでさ、出産が終わったらさ……」
ハリガネムシ「なんすか?」
カマキリ「脳への寄生……もっかいやってくんない? あれすげえ気持ちよくてさ……」ハァハァ…
ハリガネムシ「父親になるってのに、あんたは相変わらずド助平っすねえ……」
おわり
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